八十八ケ所・四国のお遍路さん(2025年2月)

 四国のお遍路さんについては、昔から何となく耳にしていたのですが、実際に歩いてみようと思ったきっかけは、ナイロビで出会ったオランダ人のAntheさんです。ベルギーのReduで本の民宿を経営しているのですが、コロナ禍の前に50歳の誕生日を祝うべく、旦那さんと88ヶ所巡りを計画していたものの、コロナ禍となり残念ながら諦めたということでした。それが2021年春頃で、その後なんとなく頭の片隅に引っかかっていました。オランダの図書館で英語版のガイドブックを見つけたり、アメリカ人の写真家が八十八の寺院を撮影した立派な写真集を手にしたりと、マリエッタと情報確認をしたりしつつも、いつか行けたらいいなあ、くらいの軽いノリがしばらく続いていました。

 転機は昨年末にふと、今年は親父が88歳の米寿を迎えるし、語呂合わせもいいから、これまで行ったことのない四国に行ってみよう(ネパール再訪も実は候補の一つでした)と思いついたことでした。フライトを調べると、オランダからソウルまでのフライトが妙に安く(その時は韓国が政治的に不安定)、ソウルから関西空港に飛んで、和歌山港から徳島港までフェリーが2時間で着くことが分かりました。バタバタとチケットを購入し、ソウルに4泊(韓国も初訪問)して、高野山にも1泊した後、徳島入りしたのが2月1日でした。エアビーで安い市内のマンション1室を1週間予約していただけで、その後は様子を見ながらお参りの場所や滞在場所を決めていこうというスタイルにしました。

 結局、徳島の民泊で2月前半を、2月後半は高松市内のホテルに滞在して、天候を見つつ仕事(オンラインでの業務)を時折しながら、合計二十三ヶ所の寺院をお参りすることが出来ました。弘法大師(空海)がお遍路巡りをしたのが1400年以上前で、それ以来どれだけの人たちがこの道を通ったのか、そんな歴史の重みを感じる毎日でした。温暖な気候の四国という勝手な思い込みのせいで、粉雪に見舞われたり、防寒具を買い足したりと準備不足は歪めませんでしたが、JRやバス、そして高松ではホテルの自転車を借りて、お寺の麓まで移動したり、地元の私鉄である琴電に乗ったりと変化に富んだ毎日でした。

 SNSで連絡を取っていたジャカルタ在住の写真家Cさんは、1400kmにわたる全行程を真夏に2ヶ月近くかけて歩いて回り、その次は自転車を使って2週間強で回ったということを知らせてくれたりしました。

 徳島というか、鳴門市にある第一札所の霊山寺は、初めてのお遍路さんを迎えるスタート地点。駐車場も立派で、観光案内も充実しており、儲かっているんだろうなあという雰囲気が漂っていて、少し俗っぽいところに思えたのですが、のんびりお参りをしていると売店のおばさんがマリエッタに近寄ってきてカタコトの英語を喋るのです。外国人も多いのですか?などと差し障りのない話をしていたところ、外国人のお遍路さんが増えていて何を言っているのか分からない、英語も勉強したいけど、、、みたいな展開に。マリエッタが「Duolinguoという無料のアプリがいいですよ!」とスマフォで紹介したら、興味を持つも、自分ではダウンロードできない!と言うのです。こちらは別に急いでいるわけではなかったので、アプリをおばさんのスマフォに登録する手続きをすることに。お客さんがいない時に少しづつ取り組めば、きっと英語も上達しますよ!みたいな無責任発言を残して、その場をさろうとしたら、「これ持っていってください!」と言って霊山寺の手拭いをくれたのでした。大事に使いたいものです。

 香川県は、お遍路さんの終点でもある88番目の大窪寺があるのですが、印象深いのは84番目の屋島寺。私の両親もここを訪ねたということを後で知ったのですが、源平合戦の舞台でもあります。12世紀に絶大な権力を握っていた平清盛を打倒しようと、立ち上がった源氏と平家の戦いである「源平合戦」が1180~1185年に日本各地で繰り広げられ、屋島周辺にも様々な史跡が残っています。
https://www.my-kagawa.jp/feature/yashima/genpei

 今こそ陸続きになっていますが、昔は島だったという標高293mの頂上に位置する屋島寺は、高松市の東部に位置しており、車でも登れるものの、我々は麓まで自転車で行ってそこから山道を登ることにしました。近所の人が散歩でもよく使っているようで、犬の散歩をしている人もちらほら。木立の中をゆっくり登っていくと立派な木門に到着。お参りをしてからお昼時だったので何か食べれるかなあと周辺を歩いてみると、カフェ。ちょっとお値段は高めだったのですが、眼下に高松市内や瀬戸内の島々が広がっている見事な場所。ゆっくり豪華なランチを楽しめました。

https://www.my-kagawa.jp/feature/yashima/genpei