「地域に開かれた幼稚園」岩手日報No.703号

2024年5月2日

 ケニア西部で母子保健サービスの向上を目指して地道な活動を長年継続している日本の法人団体であるHANDS (Health and Development Service)を今回は紹介したい。2001年にNPO法人として認定され、パプアニューギニアの山岳地帯やシェラレオネの農村部の支援。ケニアでも西部の ケリチョー郡を中心に2005年から乳幼児の栄養改善を目指して郡政府、特に教育省や農業省をうまく巻き込んで参加型のプログラムを実施してきている。

プレイサークルのおやつの時間を前に手を洗う親子
プレイサークルのおやつの時間を前に手を洗う親子

 国際協力機構(JICA)ケニア事務所で食と栄養改善分野を担当することになり、JICAのスキームの一つである草の根技術協力事業に採択されたHANDSさんのプロジェクトにも関わることになった。昨年3月に初めて訪問した活動地域のケリチョー郡は、人口が約90万人。農業が盛んな丘陵地帯で、高地で紅茶、低地ではサトウキビなど多くの換金作物が栽培されている。プロジェクト総括の八木さんに現場を案内してもらい、対象となる幼稚園での給食事業や、地元に根付いて活動する保健ボランティアを対象とした家庭菜園の1日研修を見せてもらった。研修が始まるまで校庭の木陰に陣取って周りを眺めていたら、教室の窓越しから制服を着た子供たちがこっちをじーっと見つめていることに気づいた。

 風がスーッと吹いてきて清々しい気分になり、ふと、昔ネパールの山道の休憩所でお茶を飲んでいた時に似たような懐かしい雰囲気が、ここケニアでも感じられる。

 そして今年2月同郡を再訪する機会を得た。所管しているJICA東京センターの2名の現地視察に同行。プレーサークルという新しい取り組みを見せてもらったり、小学校で菜園に取り組む先生や子供達との交流を深める機会があった。

 農村部では、乳幼児の成長に欠かせないタンパク質や各種ビタミンなどの最低限の摂取が緊急の課題だ。農業省の指導員による技術指導に加えて、保健ボランティアとの連携、そして教育省の管轄である幼稚園や小学校を対象にした、横断セクター的な取り組みがどうしても必要となってくる。

 得てして縦割り行政となりがちな途上国において、現地の人とうまくコミュニケーションを取り、いろんな人たちを巻き込んで活動を続けているHANDSの2名の日本人駐在員の仕事ぶりは見事なもの。1月からは昨年10月に帰国したばかりの元協力隊員、栄養士の大野久美子さんがプロジェクトで働くこととなり、心強い。活動期間はまだ2年強あるこのプロジェクト。今後が楽しみだ。

ケニア | 特定非営利活動法人 HANDS

「地域に開かれた幼稚園」岩手日報No.703号