スーダン出身の画家・展示会
2023年11月30日
ナイロビ郊外の元コーヒー農園だったところに、OneOffという画廊があり、これまでも2回ほど訪問したことがありました。木々に囲まれて、庭には彫刻物やガラス細工、リサイクル物品による造形作品などが飾られており、芸術村みたいな雰囲気です。当日ムランゴ農園に行く途中に、立ち寄ってみたところ、オープニングで画家も午後に挨拶に来るというので、農園の帰りにもう一度寄ることにしました。
画家ラシッドさんは、スペインのマドリッドで美術の博士号を取得後、地元のスーダンで画廊を営んで、若い画家とかの育成にも励んでいたのですが、今年4月のスーダン動乱で軍隊に自宅を占拠され、作品などもほとんど持ち出すことが出来ないまま、スペインに逃げたという激動の毎日をくぐり抜けてきた方です。ケニアでも以前に展示会を実施しており、韓国にも招待されたことがあり、「日本でも展示会を実施したいけど、だれか紹介してくれないか?スーダンにいる時はJICAスーダンの事務所にも懇意にしてもらっていた」などなど、接客で忙しい中、色々と話すことができたのが何よりでした。
今回の展示はスペインとケニアで書きあげた最新作。作品をよく見ていると、頭上に鳥が止まっている作品がいくつかあり、平和のシンボルである鳩とはちょっと違うモチーフなので気になって本人に尋ねたところ、「鳥が頭上にいる人たちはその場所から動けない人を意味している」と言うのです。戦乱のスーダンについては本人も多くを語りたがっていなかったので、これ以上のことは聞けなかったのですが、察するに動乱下で彼のように国外へ退去できずにスーダン国内に残っている人たち(女性が多い)を象徴しているようです。スーダンはケニアとも国境を接しておらず、文化的にもアラブ圏であり、最近ではパレスチナとイスラエルの対立にメディアが集中していることから、スーダンがマスコミの話題になることは随分と減っています。これも何かのきっかけだと思いつつ、本などを通じて少しづつスーダンの歴史や政治文化についても勉強しているこの頃です。

