「読書環境の違い実感」岩手日報No.712号

 ケニアにいる時は読みたい本を探すにも本屋がナイロビ市内では限られており、日本語となるとナイロビ郊外にある日本人学校や日本学術振興会の図書室から借りることが多かった。

 オランダに戻ってきて助かるのは、公立図書館が充実していること。借りられる本の多くは英語やオランダ語ではあるものの、年会費37.5ユーロ(およそ6000円)で 最大20冊まで借りることができる。オンラインでの検索や本の予約、映画の名作シリーズ(DVD)のレンタルなども可能である。

 盛岡市内でも県立図書館が昔は内丸にあり、茶畑の実家から自転車で気軽に出かけて、新聞を読んだり本を検索したりしたのだが、現在は盛岡駅西口に移転してしまい、簡単に通えなくなったのが残念だ。

 ケニアからオランダに戻って気がついたのが、住居地の一角に古本の青空文庫が増えていること。英語や他の言語の本も置いてあり、鍵もついておらず気軽に読み終えた本を預けたり、面白そうなタイトルの本を持ち帰ったりするようになった。

 料理の雑誌や観光ガイドブックも置いてあったりして、本の回転は結構早い。電車の駅構内や、図書館の一角にも青空文庫コーナーが設置されており、循環型社会がオランダでも機能していることを実感する。

 ちなみに、デジタル化が進んでいる昨今、日本では青空文庫といえば、“誰にでもアクセスできる自由な電子本を、図書館のようにインターネット上に集めようとする活動”ということで、ネット上での電子本を対象にする動きがある。しかし、本はやはり紙で読みたくなるし、年配の方々もタブレットで読むよりは馴染みのある古本の方がしっくりくるのでは?と勝手に勘ぐっている。

 オランダと日本が違うのは、本の大きさ。日本では文庫本や新書のようなこじんまりとして手に収まる大きさが主流だが、オランダの場合いわゆるポケット版でも文庫本の倍くらいの厚さと大きさになることから、屋外の青空文庫に預けておける本の数は自ずと限られる。

 つくづく日本の本は携帯向けにできているなあと気づいたところでもある。

「読書環境の違い実感」岩手日報No.712号
「読書環境の違い実感」岩手日報No.712号