「DCの桜」岩手日報No.57
2009年10月3日
ワシントン北部に位置するメリーランド州の借家から週に2、3回、職場まで自転車で通うようになって半年がたつ。鉄道路線の跡地を自転車と歩行者専用の道路に改修したルートで、途中からポトマック川沿いを走り、ワシントン市内に向かう。
約10キロの道沿いは、自然に恵まれている。ただ、雨が続いたりすると河川が増水し、はんらんしないかと、少し怖くなったりすることもある。
経済の中心がニューヨークなら、ワシントンは米国の首都。政治の中心だ。盛岡市との共通点を挙げるなら、一つは川といえよう。北上川や雫石川、中津川などに挟まれた城下町盛岡。四季の移ろいが見事であるが、ポトマック川の四季も捨てがたい。日本の多くの河川のようにコンクリートで固められていない岸辺は自然石と緑に覆われ、季節が描くキャンバスのようだ。
昨秋、ワシントンに引っ越して来たときはちょうど紅葉の始まりで、川沿いの木々の葉が見事に色づいていて、橋から眺めていても本当に飽きなかった。厳しい冬が終わり春になって、上流からの雪解け水がとうとうと流れる光景も一緒だ。
4月になると桜が咲き、5月に入り両岸の緑が濃くなるとボートをこぐ学生の姿が目立つようになる。そしてセミが鳴き出すと、もう夏。
両市とも川を中心に情緒豊かな景観の変化を楽しめるものの、有り難くない共通点もある。それは川に架かる橋周辺の交通渋滞だ。近郊からワシントン市内に通勤する場合、地下鉄やバスなどの公共機関を使う人もかなりいるが、多くはマイカー通勤で、朝夕は橋の上をのろのろ運転する車の列が目に付く。
そして三つ目の共通点は、市内の桜並木。盛岡地方裁判所の石割桜とは風情が違うものの、ポトマック川の桜並木もなかなか見事だ。毎年4月初旬には「全米桜祭り」が開催され、多くの観光客が訪れる。
近郊のメリーランド州にも幾つか桜並木があり、普段は閑静な住宅街だが、桜が満開となる週末には、車に乗った家族連れが狭い路地に押し寄せてくる。
昨秋から繰り広げられた大統領選挙、そして今年1月のオバマ大統領の就任式を家族と一緒に体験することができたことは、忘れられない思い出となった。
私の職場がホワイトハウスの近くにあることもあり、そこを通りかかるときには、フェンス越しについつい中をのぞいては「大統領が居ないかな」と期待したりする。今までのところ残念ながら遭遇してはいないが。 米国に引っ越してきてもうすぐ1年。ワシントンは、首都とはいえ、意外とこぢんまりとし、自然に恵まれている。盛岡と似ている街で、その分かなり過ごしやすいと最近感じるようになってきている。
