「ABACOファンド」岩手日報No.264

2014年5月11日

 南米ペルーをはじめ、開発途上国の援助協力に取り組んでしばらくになる。ペルーでは森林保全への投資を環境省とともに、この2年間取り組んできていた。

 本来投資とは、投資先の成長を期待して資金を投じる応援の意味もあり、単にもうけるのではなく、応援しがいのある投資先を選んだ上で、そこに住む住民や環境、そして社会に良い影響を与えることを期待するものでもあるといえよう。

 近年、このような考えを基づいた「社会的責任投資(SRI)」が、オランダや英国などヨーロッパ諸国で盛んになっており、年金運用などに利用されてきている。

 日本でも、草の根型SRIがいくつかあり、その一つがミュージックセキュリティーズ(株)(MS、本社東京)が運営するマイクロ投資プラットフォーム「セキュリテ」である。

草の根とはいえ、MSは日本国内の第二種金融取引業者として金融監督の枠内で責任ある運営を行いつつ、応援したい地域密着型の企業やプロジェクトに投資している。

 事業がうまくいけば投資金額を上回るリターンが得られる一方で、そうでなければその限りでないというリスクはあるが、地元特産品がもらえるなどの特典も組み合わせているところがこのモデルの特徴でもある。

 また、MSは東日本大震災で大きな被害を受けた事業の早期再建を目的とした「セキュリテ被災地応援ファンド」を立ち上げ、半分投資・半分寄付という組み合わせで、2011年3月の東日本大震災以降、積極的に沿岸部の地場産業復活を支援してきた。

 そのMSが、ペルーでも新しいファンド「Abaco小さな農家応援ファンド」をこの4月に立ち上げ、総額5千100万円を集めようとしている。

 米州開発銀行の多数国間投資基金と連携したファンドで、ペルーの日系人が作ったアバコ貯蓄信用協同組合(略称:Abaco)をパートナーに、日本にも輸出されているアスパラガスなどの換金作物栽培や家畜飼育を実施する小規模農家への金融支援を目指している。Abacoはこれまでに延べ100以上のマイクロファイナンス機関、貯蓄信用協同組合、農業生産者組合等とのパートナーシップを結び、計1万4千人の小規模農業生産者・事業者を支援してきた実績がある。

 ペルーでの金融サービスは、都市部での展開が多く、農村部ではアクセスなどの問題から、非効率な高利貸しから借りざるを得ない農民が多い。今回、ペルーにて「Abaco小さな農家応援ファンド」が立ち上がったことをうれしく思う。  開発途上国の草の根活動などに共感した個人が、地元の人々の暮らしを良くしたいといった動機などで、ホームページを通じて投資をし、活動を支援する資金が集まってくるSRI。そんなファンドを末永く応援していきたいものだ。

「ABACOファンド」岩手日報No.264