「チョコレート」岩手日報No.233
2013年10月7日
チョコレートが嫌いな人は少ないだろう。チョコレートの材料となるカカオは、熱帯に生息する木の実で、その多くは西アフリカ(象牙海岸やガーナなど)で栽培されている。
南米もエクアドルやブラジル、ベネズエラが有名な産地だが、実はペルーのアマゾン流域でも栽培される。西アフリカでは、大規模栽培で農薬等を使った効率的なカカオ生産が盛んだが、ペルーの場合、多くが小規模農家で、最近は有機カカオの栽培に取り組む農家が増えている。
先日、家族との旅行でペルー山間部のクスコ市に滞在した。同市にはチョコ博物館があり、ちょうどチョコレート作りの講習会があったので、息子2人と参加した。思えば、盛岡市郊外にある「手づくり村」で冷麺やおせんべいを焼いたりする感覚に近い。
講習会は約2時間で、参加費用は70ソル(約2千500円)。事前予約が必要で、この時の参加者はイギリス人カップルと、ドイツ人とカナダ人女性の計7人。講師のマヌエル氏はクスコ出身で、質疑応答にジョークなども交えて、あっという間の2時間だった。
チョコの博物館では、カカオの栽培環境や生産量、メキシコが原産地でどのように世界中に広がったかというカカオの歴史なども写真や図解入りの説明がされている。実際のカカオの実(缶ビール程度の大きさ)を手に取りながら20分ほど座学した。1本のカカオの木から実際に取れるチョコレートの量は、板チョコほぼ4枚分などと分かりやすい説明で、息子たちも納得して聞いた。
いよいよ実演。キッチンに移動して、チョコレートの材料となるカカオ豆が調理場に並べられ、味見することに。意外と苦くなく、なかなかおいしい。
次に、土鍋を使った古代のやり方で豆を焙煎(ばいせん)した。5分ほどでプーンと香ばしい匂いが部屋に充満した。キッチンのガラス越しに、博物館を見に来た観光客が鈴なりになっていた。
焙煎された豆を冷やして、殻を外す作業に入る。殻は、ほうじ茶のようにチョコ茶としてみんなに振る舞われる。これが結構おいしかった。
この後、100%のカカオ豆を擦り鉢に入れて、ペーストを作る作業に入る。これがなかなか骨の折れる作業だったが、丁寧に擦るとカカオ豆がペーストに変化して、チョコレートみたいになるから不思議なものだ。
最後は、好きな型枠を選んで、ミルクチョコか、ブラックチョコのペーストで思い思いのチョコレートを作ることに。ナッツやレーズンなど好きなものをまぜていい。冷やすのには小1時間待つことになったが、出来上がった自分のチョコを受け取ったときはやはりうれしかった。
お菓子の原材料が身近にあり、実際に使って楽しむことのできる「地産地消」を子どもたちと一緒に実体験でき、夏休みのいい思い出になった。
参考文献:「チョコレートの世界史」武田尚子著 中公新書2088
(日曜日に掲載します)
