「KLM」岩手日報No.217

2013年6月9日

 私は現在ペルーの首都・リマに住んでいるが、オランダは延べ3回、計約7年間暮らして、妻もオランダ人であるなど「第二の故郷」とも呼べる国だ。皇太子ご夫妻が先ごろ、オランダの首都アムステルダムで開かれた新国王即位式に参列したのを機に、オランダへの思いや南米との関係に触れてみたい。

 オランダは4月下旬、女王の誕生日を祝う行事がよく開かれる。今年は33年間女王を務めたベアトリックス女王が、長男のウィレム・アレクサンダー皇太子に王位を譲ることになり、アムステルダムで新国王即位式が開かれた。

ペルーのオランダ大使館で、大使(前列右から3人目)と一緒に新国王の即位を祝うKLMオランダ航空のクルー=リマ
ペルーのオランダ大使館で、大使(前列右から3人目)と一緒に新国王の即位を祝うKLMオランダ航空のクルー=リマ

私は南米に移ってからも、リマにある大使館を通じて、オランダ政府のいろんな行事に参加させてもらってきた。大使夫妻主催の即位記念パーティは夜8時から大使公邸で開かれ、在ペルーオランダ人や各大使館の招待客を含め、約400人が集まり盛大に祝った。

特別ゲストとして、オランダから直行便をペルーに飛ばしているKLMオランダ航空のパイロットやスチュワーデスたちも参加、式典がさらに華やかになった。普段は制服での外出はできないとされ、今回は「大目にみてもらった」とあるパイロットが教えてくれた。

 日本からは、病気療養中の雅子さまが2002年以来、約11年ぶりに外国を公式訪問。皇太子ご夫妻がアムステルダムで開かれた新国王即位式に参列した様子を私はビデオの中継で家族と自宅で見ながら、オランダが新世代に移行したと実感した。

 マキシマ新王妃は南米アルゼンチンの出身。ラテン女性たちが夢見る結婚、王子様との結婚という、なかなかかなわない夢を実現させた。ペルー国内外でもここ数カ月、タブロイド紙や週刊誌をにぎわせてきた。

マキシマ王妃の実父は、アルゼンチン軍事政権下で農業大臣を務めた経歴がある。軍事政権かつ独裁政権下の閣僚であったことが問題となり、2002年に娘が結婚する際は、オランダの国内世論で結婚反対の声も多く聞かれた。

軍事政権下で無実の市民に対する大量虐殺を引き起こした政権の実力者の娘と、王位継承者との結婚を許していいものか。もし結婚を選ぶなら王位継承権を放棄すべきといった世論が起きたのを思い出す。

結局、実父の元大臣は大量虐殺に一切関与していなかったとなり、オランダで無事結婚式を挙げた。王妃と新国王との間には3人の王女が生まれている。

 イギリスでは、昨年2月にエリザベス女王が即位60年を迎え、チャールズ皇太子は既に64歳に達して、国王即位にいろいろな憶測も流れている。そんなことと比較をされながらも、4月に46歳になったばかりのオランダの新国王は、年齢的にまだ若く、今後の采配が期待されているといっても、決して過言ではないだろう。

「KLM」岩手日報No.217