「防災センター」岩手日報No.198
2013年1月20日
南米のペルーは日本と同様、環太平洋地震帯に位置し、地震や津波の多発国だ。これらの災害は社会や経済の発展に大きな障害となっている。
1970年、ペルー中部の沖合で大地震が発生し、約7万人が亡くなった。その直後日本政府はペルーに調査団を送り、現地では日本で研修を受けた技術者たちが調査団に協力した。
ペルー政府の要請で1986年に日本・ペルー地震防災センター(CISMID)がリマ市北部の国立工科大構内に設立された。
以来CISMIDは国際協力機構(JICA)や科学技術振興機構(JST)及び日本の大学・研究機関と25年以上の長きにわたって協力、交流を続けている。CISMIDの中核的な役割を担っているのは、日本の技術協力や日本への留学などによって育成された人材だ。
CISMIDプロジェクト調整員の入倉もえぎさんの案内で先日施設を見学し、研究者や技官の方々と話をする機会を得た。
偶然というべきか、CISMIDの研究者らは2011年3月の東日本大震災の際、ちょうどプロジェクトのワークショップで日本に滞在していた。昨年3月には岩手県や宮城県の津波被災地も視察している。
震災当日、午前中は神奈川県横須賀市にある津波のシミュレーション施設を見学し、午後に鎌倉市内を観光していたときに地震に遭った。宿泊先の錦糸町のホテルに戻ったのは夜の10時過ぎだったという。
東京大学で博士号を取得し、当日もその現場に居たCISMID副所長のミゲル・エストラーダさんは「震災後でもみんな落ち着いて避難しており、都内でも治安統制が取れていた」と、当時のことを振り返る。
彼はこれらの教訓をペルーでも生かせないかと考えている。リマ市内に、地震や津波対策の啓蒙(けいもう)普及や地震・津波減災技術を一般市民に紹介する情報センター設立を目指している。
ペルーは01年と07年にマグニチュード8を超す地震が発生し、数百人の死者と数万棟を超える建物倒壊という被害を受けた。
今後も同様の災害が発生することは確実で、将来の地震・津波被害リスクを評価し、被害軽減のための具体的な対策を講じることが求められている。
東日本大震災の教訓は国内だけでなく、ペルーのような地震津波国でも大いに有用だ。被災地から国内外に向け、積極的に発信を続けてもらいたい。
