「オランダの夏休み」岩手日報No.103

2010年11月21日

 ワシントンに暮らす前、オランダ中部の学園都市ユトレヒト市に約3年住んでいた。人口約30万人、盛岡市と同規模でこじんまりとした過ごしやすい街だ。世界史の教科書に出てくるユトレヒト条約が結ばれた場所で、街の中央には運河が流れ、高さ112mと同国で最も高い教会の塔。通称「ドーム」が街のシンボルとなっている。

 アメリカの公立小学校の夏休みは、6月中旬から8月下旬までと約2ヵ月半。一方、オランダは通常6週間だ。わたしたちがオランダに「里帰り」したときは、既に一部の知り合いの家族は遠出していたが、未だ出かけていない家族と2年ぶりの再会を楽しんだ。

ユトレヒト市内の小学校で7月に行われた卒業式。式開始を前に校庭に集まった児童

 家族でオランダに向かったのは、同国が活躍したW杯サッカー、準々決勝の余韻冷めぬ7月4日。久々に降り立ったスキポール空港は、上々の天気で相変わらず観光客とビジネスマン・ウーマンで混雑していた。

 11歳と8歳の息子二人は、オランダの地元小学校を離れて約2年がたっていた。夏休みで旧友らとなかなか会えないのではと少し心配していたが、「友達の友達」と芋ツル式に連絡が取れ、友人宅に宿泊するよう誘われるなど予定外の活動もあった。

 W杯決勝戦の日、市民はみんな朝からソワソワしていた。32年ぶり3回目の決勝進出で初優勝を目指したオレンジ軍団のオランダ。ロベンの惜しいゴールが決まっていればと後で悔やんだものの、抜群のパスコントロールを誇るスペインチームに延長戦で1点を入れられ敗れた。

 オランダでは、小学校の夏休み開始時期が地域によって異なる。国を3地域に分け、 今年はまずユトレヒト市を含む中部が7月3日から、北部が1週間遅れの同10日から、そして南部がその市2週間後24日からとなった。来年は中部が7月2日、そして南部が同9日、最後に北部が同23日からの予定となっている。

 国内の学校が一斉に休みに入ると、バカンスに向かう家族で高速道や飛行機などの交通機関が混雑・渋滞し、パニックになりかねない。こうしたことを防ぐため、国を3地域に分けて夏休みをずらしているという。

 オランダは共働きの夫婦が多い。近所の家族を見えていると、少なくとも2週間、長いと4週間近く夏休みを取って家族旅行に出掛ける。

 わたしは小学生の時、夏休みをよく実家の盛岡市で過ごした。父親だけ1週間前後で職場に戻ったことを思い出す。母親と我々子供たちは1ヶ月半近く夏休みのほとんどを、いとこらと遊んで過ごしたものだ。

 夏休みの子供たちの暮らしぶりを比較すると、オランダや米国に比べ、日本は少し窮屈だと思う。やれ読書感想文だ、観察日記だ、と日本は課題や宿題が多いように感じる。

「オランダの夏休み」岩手日報No.103