「オランダのごみ事情」岩手日報No.271

2014年6月29日

 ブラジルで開催中のサッカーワールドカップ(W杯)にて、日本サポーターが試合後に自発的に行ったごみ清掃が世界中の話題になったことが記憶に新しい。どこで生活をする上でも切り離せないのが、毎日出るごみ。約6年ぶりのオランダ生活を始めて、以前と比べていろんな意味で変化したと思う点があり、戸惑いつつも近所の家族らから教えてもらっている。

 オランダは、各自治体によってごみ回収の実施態勢が違うのだが、6年前まで住んでいたオランダ中部のユトレヒト市では、ガラスや古紙、古着などはリサイクルを目的とし、街角に建設された地下式のごみ捨て場にて随時捨てることが可能だった。

ユトレヒト市内の運河を運行中のゴミ収集ボート
ユトレヒト市内の運河を運行中のゴミ収集ボート

 家庭から出る生ごみや燃えるごみは、各家庭に設置されているプラスチックのコンテナに入れ、毎週収集車によって収集されていた。生ごみは、堆肥として再利用することを目的に茶色、その他の燃える家庭ごみは、選別せずに灰色のコンテナに入れて回収されていた。日本に比べたら分別はかなり緩く、正直戸惑っていたことを思い出した。

 ユトレヒト市でこの6月から生活を再開するに当たって、近所の人にまず忠告されたのが、燃えるごみのプラスチックについて。別途青いコンテナにまとめて回収するようになり、収集は3週間に一度。その日程はウェブサイトで確認できるということだった。その他の家庭ごみは、地下式のごみ捨て場に随時持って行けるのだが、捨てるためには磁気式のパスが必須と言われ、大分近代化されたなあと感心した。

 家庭ごみの約5割が実はプラスチックだったということから、プラスチックとそれ以外に分別するようになったという。隣の奥さんは「3週間に一度しか回収されないから、すぐにコンテナがいっぱいになってしまう」と少し不満げだ。

 また、粗大ごみは、各地区に設置されているごみ処理場に各自が持ち込むことになっている。素材ごとにコンテナが分かれ、住民が自家用車や自転車で平日と土曜日の営業時間に捨てることができる。分別収集し再生の際にかかるコストや環境汚染の程度などを総合的に判断した方針だろうが、市民に自発的に参加させ、自治体の省力化を図り、処理経費の削減を目指しているものと思われる。また、街中では自動車などの乗り入れが制限されていることから、運河沿いはボートでも回収している(写真参照)。

 このようにオランダの自治体では、ごみ収集体制の近代化を図りつつ、人員を使ったごみの分別収集をせずに、逆に市民にコンテナやごみ収集所まで持ってこさせることで省力化を目指している。ただ各家庭から出るごみの量をいかに削減させるかということについては、いまだ改善の余地があるようだ。