「フェアトレードタウン」岩手日報No.303
2015年3月1日
フェアトレードタウンと聞いてピンと来る人はいまだ少ないであろう。一言でいえば、市民、行政、企業、小売店、学校など街全体でフェアトレードを応援する自治体のことを指す。行政、企業・商店、市民団体などが一体となって、フェアトレードの輪を広げることで不利な立場、弱い立場に置かれた開発途上国の生産者の人たちの自立や環境保全に貢献しようとする運動でもある。
日本では、2011年に熊本市が日本初のフェアトレードタウンとなり、名古屋や札幌などの都市も認証を目指す市民運動を展開しつつある。
発祥の地英国をはじめ、欧州を中心に米国、カナダ、ブラジル、コスタリカなどを含め、これまでに世界25カ国1100以上の自治体が認証され、その中にはロンドン、ローマ、パリといった首都も含まれている。
オランダでも1月現在、393市町村のうち、54市町村がフェアトレードタウンになっている。その一つであるユトレヒト市に隣接するニューウェハインは10年、国内10番目として認定され、地元の企業や店舗、非営利団体から幅広い支持を受けている。
2月7日、街のスポーツや文化芸術への功労者や団体への表彰式があり、フェアトレードタウンも10あるカテゴリーの一つとして、表彰の対象となっていたことから、参加してみた。
昨年のフェアトレードタウンへの功労6団体がノミネートされ、3団体が審査を通過した。スーパーマーケット、地元レストラン、そして今回表彰されたスポーツ非営利団体のAtverniである。陸上競技場を管轄し、大会やイベント等を実施する際に、フェアトレード認証の製品である紅茶やコーヒー、ホットココア、そしてバナナ等を随時提供してきたことが評価されたと、報告があった。
ちなみにフェアトレードタウンになるための基準は▽自治体によるフェアトレードの支持と普及(例えば自治体内の事務所や食堂にてフェアトレード産品を提供する)▽地域の商業施設によるフェアトレード産品の幅広い提供(地元での容易な購入や、カフェ・レストランなどでの飲食)▽地域社会への浸透(学校や大学、地元企業等による支持)▽運動の展開と市民の啓発(イベントの開催やメディアへの露出)▽フェアトレード推進組織の設立と支持層の拡大-の5点がある。
ただし、一度認証を受けたらそれで終わりではなく、2年ごとの更新(最初だけは1年後更新)を受けねばならず、一過性にならないよう気をつけねばならない。 昨年3月、8回目の国際会議が欧州以外では初めて熊本市で開催され、9回目は今年7月に英国ブリストルで開催が予定されている。地産地消や地域活性化、気候変動を含めた環境保全といったテーマも含め、各国の経験や展望が議論されるようだ。格差が拡大する一方の日本でも、フェアな経済や社会を築くことへの要望が高まっているような気がする。世界各国で広がりつつあるフェアトレードタウン運動からも、学べることがたくさんありそうだ。
