「アムスのデモ行進」岩手日報No.491
2019年3月24日
日本では11日、発生から8年を迎えた東日本大震災の追悼が行われたが、オランダの首都アムステルダムでは、その前日の10日午後、間接的な災害ともいえる地球温暖化の防止と早期対策を訴えるデモ行進が行われた。
冷たい雨の中、約4万人がプラカードを持ったり楽器を演奏しながら練り歩いた。日曜日ということもあり、参加者は老若男女さまざまで、その中でも家族連れの姿が目立った。
2月7日にはデン・ハーグにオランダ国内から中高生ら8千人以上が自発的に集結し、地球温暖化防止のデモ行進を行った。高校3年生の次男も学校から許可をもらって参加した。
こうした行動は、スウェーデンの女子高生グレタ・トゥーンベリさんが昨年秋から学校を休み、大人たちの地球温暖化対策についての無策ぶりを訴えるべく国会前で1人座り込みを続けたのが始まりだ。会員制交流サイト(SNS)でヨーロッパを中心にあっという間に拡散し、日本でも今月、京都や東京でデモ行進が行われた。延べ100カ国以上の若者らが一斉に抗議行動を繰り広げている。
オランダは環境保護団体グリーンピースが国際本部をアムステルダムに設置しているなど、環境問題に対して急進的なイメージがあったが、最近は後手に回っている印象が強い。それを象徴しているのが2013年に同国の環境問題に関する非政府組織(NGO)ウルヘンダ財団などが起こした世界初の「気候変動訴訟」だ。
この訴訟は政府に対し、効率的な温暖化対策には二酸化炭素(CO2)排出量を1990年を基準として、20年までに40%削減する必要があると主張。ハーグの訴訟審裁判所は15年の一審判決で原告側に軍配を上げ、政府が国内の石炭火力発電所を30年までに全面閉鎖するという決定や、市民の健康を守るため5年以内にCO2排出量を25%カットするよう命じたのだった。
ところが一審判決後も、排出量削減は12年以降、13%レベルに停滞(この期間はちょうど保守派の現政権と重複している)。同財団は一審判決が支持した25%削減も満たせないとして政府を再び訴えた。訴訟審裁判所は昨年10月、20年までにCO2排出量を25%削減するよう命令。政府は2枚目のイエローカードを突きつけられたと言える。
国土面積のおよそ3分の1が海面下にあるオランダは、地球温暖化で海面水位が上がることによる被害を直接に受けることになる国の一つ。政府が今後、どのような政策を取るのか気になるところだ。
