「コロナ」岩手日報No.548

2020年6月14日

 日本は5月25日、新型コロナウイルス感染防止のための緊急事態宣言が解除された。欧州諸国でもイタリアやドイツなどで外出規制が緩やかになり飲食店の営業も一部で始まっている。オランダでも5月19日に具体的な緩和方針が発表され、6月1日から実施に移った。

 今回の新型コロナ感染に伴いオランダでもいろんな規制が強いられてきた。この規制からもオランダ事情が垣間見えてくる。

 まずは「ソーシャルデジスタンス(社会的距離)」。オランダでも歩く人との間隔を1・5㍍以上空けることなど多様な規制が適用され、その多くは1日以降も継続されている。

 この時期、オランダ国民にとって、気になって仕方がない夏の休暇だ。政府はステイケーション(自宅で休暇)を推進しているが、国民の多くは南欧諸国での休暇を希望している。

 これまで経済上封鎖できない観点からドイツとの国境は開放したままで、物流が滞らないようにしてきたが、特別な理由がない限り国境を超えた移動は認められていなかった。

 15日から観光目的の国境越えを認める表明をドイツやフランス、ギリシャなどが出しており、オランダから飛行機で出かけるパックツアーが販売されるようになってきた。不用不急の外出を避ける傾向がオランダでも変わりつつある。

以前よりマスクを着用する人が目立ってきたユトレヒト中央駅待合室

 前回の紙面で多くのオランダ人にマスク着用の習慣がないことについて触れた。1日から公共交通機関を利用する13歳以上の乗客に、非医療用マスクの着用を義務づけられた。マスクを着用していない乗客には、95ユーロの罰金が科される。バス乗り場や駅構内でマスク着用者を見かけるようになったが、多くは乗車する直前に装着しており、街中やスーパーなどでは着用者をほとんど見られない。

 日本同様、オランダの経済もかなりの打撃を受けた。中小企業や個人事業主への支援は迅速だった。個人事業主は、税務署と市町村を通じてネット上で申請手続きを進めることができ、早い市町村では4月中旬、遅くても4月下旬には1回目の臨時給付金が銀行口座に振り込まれ、急場をしのぐことができた。その金額は、最大で月額約1500ユーロ(約18万円)とかなり優遇され、3カ月に渡って配布が予定されている。

 オランダ政府は社会的弱者への緊急の対策、つまり所得の再分配政策を重要視し、迅速に対応した。来年3月に総選挙を控え、経済支援は現政権にとって、なおざりにはできない課題の一つである。 

 ここ1カ月間のオランダの新型コロナ感染動向や一連の対応を通じて、普段は気づかない政府の機能が良くも悪くもあぶり出されたような気がする。