「 スキーを楽しむキルギス人たち」岩手日報No.351

2016年2月21日

 首都のビシュケク市内からも冠雪した標高4000m級の山々が連なって見え、時には氷点下20度まで下がるという本格的な冬を迎える中央アジアのキルギス共和国。日本でも冬のスポーツといえば、スキーかスケートで、今でこそ国内のスキー場は閑古鳥が泣いているところも多いが、私が学生だった頃は、週末ともなるとリフトに乗るために並んで待たなければならないほど盛況だったことを思い出す。普段生活しているオランダでは、 スケートが盛んでオリンピック等の国際舞台ではいつも好成績を収めているが、山が無いこともあり、多くのオランダ人にとってスキーは贅沢なスポーツで、1週間ほど休暇を取ってアルプスのあるオーストリアやスイスまでわざわざ出かけてリゾート感覚で楽しむ 。岩手県のように車でさっと出かけて日帰りで滑って近くの温泉に浸かる環境をいつになく羨ましく思ったりしていた。

 キルギスにもスキー場があると以前から聞いていたが、なかなか出かける機会がなかった。キルギス東部のカラコルは旧ソ連時代から、スキーリゾートとして有名で、標高3000mからスロープが述べ20kmも広がり、パウダースノーが楽しめることから、カザフスタンやロシア等近隣諸国からスキー客が来ることでも知られている。職場のスタッフであるKanaatさんは友人と週末に400kmある道程をドライブしてまで、カラコルのスキー場に泊りがけで出かけている。そして、カザフスタンの冬季オリンピックチームが合宿することでも知られている本格的なスキー場である。

 しかしそんな遠くまでは出かけられないので、一般者向けに日帰りで行けて、リフトがあるスキー場がビシュケク市郊外にあると知り、調べてみると何と4カ所もある。そこで、プロジェクトで一緒に働いている人たちが事前に準備してくれ、ビシュケク市内から車で約40分のKashka Suu というこじんまりしたスキー場へ、バレンタインの日曜日に出かけることになった。

当日のスキー・ピクニック参加者
当日のスキー・ピクニック参加者

 当日は、日本人は私を含めて3名、家族連れで来たキルギス人スタッフや友人を含めると合計で20名近くという大所帯。スキー場に向かう途中でスキー一式をレンタルできるというので、朝9時半に市内を離れた。レンタル屋は、普通の農家の物置で、通りに看板が出ていなければ見落とすような質素な場所。1日のレンタル料は500ソム(約800円)。地元の物価からしたら幾分か高めである。スキー場に着いて、ふと気づいたらスキーをするのは、我々日本人3名とキルギス人2名のみ。他の人たちは?と思っていたら、テラスに続々とサンドイッチやサラダ、飲み物等が並べられ、まるでピクニック。そり遊びに興ずる子供達を除けば、大人たちはスキーではなく冬山ピクニックに参加した感覚なのであろう。

 スキーを学校で教えてもらうわけでもなく、まだ一般的には、ちょっぴり贅沢な冬のスポーツということもあるのだろう。今年は例年と比較して暖冬だったこともあり、スキー場の積雪量も少なめだったとのこと。それでも充分楽しめた。今度は別のスキー場に出かけてみたい。