「キルギスの麺類」岩手日報No.408
2017年6月11日
岩手県の名物として、冷麺、じゃじゃ麺、わんこそばの三大麺がよく知られているが、キルギス人も麺類が大好きだ。そもそも遊牧民族で、東を中国、北をカザフスタン、南はタジキスタンと多彩な文化に囲まれているキルギス。食べ物も、旧ロシア系(ピロシキとかボルシチ)、中央アジア系(炒めご飯や肉まん)など、バラエティーに富んでいる。私も地元の食堂でよく食べるのが麺類である。
キルギス独特の麺類としてベシュパルマックと呼ばれる、羊や馬の肉をのせた皿うどんがある。キルギス語で「5本の指」という意味で、結婚式やお祭りの時によく出される。地方ごとに麺の太さや幅が違い、西部のタラス地方でごちそうになった時は幅が5㌢くらいある麺が出てきた。
通常に食べているのは、ラグマンと呼ばれる麺。具は牛肉か羊肉と野菜(タマネギやピーマン、トマトなど)を炒めて、ゆでたての麺にかけて出来上がり。皿うどんやチャンポンみたいな感じで、汁なしも頼むことができるなどバラエティーが豊富なのもうれしい。
バザールなどの食堂だと、注文が入るたびに手打ち麺を釜でゆでてから出してくれ、これが5分とかからない早さ。割り箸(中国製)まで出してくれたりする。辛いのが好きな人は、唐辛子の調味料・ラザ(ラー油に近い)も出してくれる。難点は、少し脂っこいことだろうか。
地元の人はラグマンのほかにナン(インドとは違う)と呼ばれる丸いパンと、お茶を一緒に注文することが多い。お茶は、紅茶か緑茶を選べる。昔、日本に技術研修に行ったことのある職場の同僚ヌルランさんは「日本のうどんもおいしかったけど、ナンがないのがいつも寂しかった」と、キルギスと日本の食習慣の違いについて述べてくれたことがあった。
日本人にとってキルギスは遠い国なことは間違いないが、意外と共通点が見いだされると思うこのごろである。ご飯を食べながらこんなジョークを通訳の人が話してくれた。「昔は日本人もキルギス人も同じ家族だった。でもしばらくしたら、肉好きな家族はキルギスに残り、魚好きな家族は日本に向かっていった」。真偽は確かめようがないけれど、あながちうそだとは言い切れない気がする。キルギスという国は、もしかしたら日本人にとって「近い国」なのかもしれない。
