「サモサ」岩手日報No.430

2017年11月26日

 冬になるとホカホカの肉まんが時々食べたくなる。外の寒気ゆえか、コンビニとかで売られているもので十分においしい。キルギスにもそんな食べ物がある。おやつ代わりにも簡単な食事にもなるサモサだ。

 中身がギョーザみたいに肉(鶏肉や羊肉、牛肉、ただし豚肉はほとんど見かけない)やタマネギ、トマトなどが入っていて、外がパンもしくはパイ生地でできている。日本のパン店で売られているミートパイがそれに近いかもしれない。三角形だったり丸形だったりし、およそ10~15㌢程度の大きさである。

 昔住んでいたネパールでも同じ名前のものがあったが、小ぶりで油で揚げたものが多く、中身もジャガイモや青豆で肉は入っていないことが多かった。中央アジアのは「焼きサモサ」。オーブンや窯で焼いたものがキルギスだけでなく隣国カザフスタンや他の中央アジアでも街角でよく売られている。

 9月後半に、プロジェクトの苗畑管理人たちをカザフスタンへ果樹栽培研修に連れて行った時に食べたサモサが実においしかった。

 朝早く首都ビシケクをたち、1時間半ほど西に向かったところにある国境を無事越え、ほっとしたという心理的なものもあったのだろうが、本当においしくて安く、うれしいことに紅茶も無料で飲み放題だった。全部で18人いたのだが、1人二つずつ平らげて屋台の中で紅茶をたっぷり飲んで約1500円。普段は愛想があまりよくない苗畑管理人たちの顔も幾分かほころんでいたように見えた。

 サモサを焼く作業は見ていて楽しい。街頭に設置されたタンドリーチキンを作るような窯の内側に、料理人が手作りのサモサをペタペタと張り付け、真っ赤になったおき火を窯の底に置いてふたをして待つこと30分。普段街頭やスーパーで買うとどうしても焼き上がってから少し時間がたっているので、中身の肉汁などを吸ってしまい少し湿っていることが多いが、このサモサはホカホカで外皮が程よく焦げていて具はジューシーだった。

 以前、キルギスの麺類について取り上げたが、日常的に食べているスナックではやはりサモサが一番いいなあと思う冬のこのごろである。