「世界遊牧民族ゲーム」岩手日報No.468

2018年10月14日

 「World Nomad Games(世界遊牧民族ゲーム)」は遊牧民のオリンピックとも言われており、遊牧民の世界一を決める大会として2014年に第1回大会がキルギスで開催されて以来、2年に1度実施され、第3回大会が今年9月2~8日にイシククリ州北部のチョルポンアタを中心に開催された。

 オリンピック同様、開会式・閉会式も盛大に行われ、今年は合計37種類の民族スポーツが繰り広げられ、日本からもレスリングや相撲、アームレスリング、タカ狩猟などに選手が参加した。

 できればこの大会を観戦したいと思っていたところ、ロシアのアルタイ地方への出張帰りの9月1日、ノボシビルスクから乗った飛行機で隣に座った方が、レスリングのコーチでまさにこの大会に参加するために日本からキルギスに向かっているという。

 名刺を交換し、自己紹介して2年前の第2回大会にチームメイトが参加したことのある田中弘済さんだと分かる。同志社大の学生も2人同行しており、チョルポンアタにある会場で、ベルトレスリングなどの試合に参加する予定だと楽しそうに語ってくれた。

 田中さんは、10年以上前に中央アジアで盛んなベルトレスリングという競技と出合い、それ以降ロシアや中央アジア諸国への遠征や試合を重ねてきている。普段は地元の大阪で建設業に携わっており、多忙な毎日の合間を縫って練習をしたり、自ら立ち上げた「民族格闘技研究所」を通じて、ベルトレスリングやモンゴル相撲など世界各地に存在する組み技系民族格闘技について研究・分析し、さらに実践することにより知見を広げることを目指している。

 田中さんたちが試合をしている期間に試合会場を訪ねることはできなかったが、最終日の9月8日に現地巡回指導の帰りに会場のチョルポンアタを訪ねることができ、グレートノマドレスリング(今回の大会で行われた13種類の民族格闘技の無差別級チャンピオンが統一ルールのもとで競技する種目)の無差別級の決勝戦を観戦した。ロシア選手対イラン選手。どちらもがっちりした体格でいかにも強そう。接戦だったがロシア選手が相手を組み倒して優勝。観客から大きな声援を受けたのだった。

 室内競技の他に、郊外では民族舞踊や音楽などの野外演奏、競馬などの馬術競技も開催され、地元の青年海外協力隊員たちも観戦に出掛けていた。観光客目当てに鷹匠(たかじょう)が寄ってきて写真を撮らせる商売もあったりして、なんともにぎやかな祭典だった。第4回大会は2年後にトルコで開催予定とのこと。どんな大会になるのか今から楽しみだ。