「シーバクソン」岩手日報No.489

2019年3月10日

 私が2015年秋から携わっている国際協力機構(JICA)プロジェクト「キルギス国林産品による地方ビジネス開発プロジェクト」も、今年秋の終了時までにどんな成果が上がるかは、雪解け後の活動に懸かっていると言っても過言ではない。

 対象としているのはキルギス北部の3州で、このうち、東部のイシククリ州と首都があるチュイ州は、各国の援助機関や国連などが比較的盛んに支援してきており、営林署の対応にも慣れたところがあって実務能力もそんなに悪くない。

 一方、西部のタラス州は11年に青年海外協力隊が引き揚げ、米国の平和部隊もしばらく派遣を取りやめている。開発援助があまり届いていない空白地帯で、観光資源も乏しい。

 今回取り上げるタラス州のバカイアタ営林署は、地味でこぢんまりとしており、当初はプロジェクト参加も積極的に働きかけてこなかったため、何を活動の柱にすればいいのか迷ったくらいだった。

 それでも気長に付き合ううちに、署長のシャイロベックさんは私とほぼ同い年で朴訥として無口だが、有言実行の人だということが分かってきた。

 2年前の春、矮化リンゴやプルーンなどの苗木をポーランドから調達して、タラス州では唯一この営林署に試験栽培向けに配布することになったが、その時は正直言って、うまく運営できるとは思っていなかった。

 また、日本でも最近、健康食品として脚光を浴びつつあるグミ科の小低木になる黄色い果実「シーバクソン」(北海道などではシーベリーと呼ばれる)もロシアの西シベリア・アルタイ地方から導入した。

 これは野生よりとげが少なく果実は大きめの改良種で、シャイロベックさんは部下をうまく使いながら肥料の手配やフェンスの強化、苗畑管理人への指示出しなど、こつこつと仕事を進めてくれた。

 17年秋には日本での2週間の研修にほかの3人と参加。岩手や青森の果樹生産者や加工工場、流通会社、種苗会社などを訪問し、得たところが多かったのか日本びいきになってくれた。

 今年で3年目のシーバクソン試験栽培は、導入した4品種の改良種が順調に育っており、今年の目標である苗木5千本生産を目指して、技術支援や関連備品の購入を継続する予定だ。将来的にはタラス州への経済的効果をもたらすようなシーバクソンの商業生産につながることをひそかに期待している。