「プロジェクト紹介 リンゴ」岩手日報No.515
2019年10月20日
2015年9月から4年間の予定で、キルギスの北部3州(タラス、チュイ、イシククリ)で展開してきた「林産品による地方ビジネス開発プロジェクト」も残すところわずかとなった。
17年春には、3州の7営林署に試験圃場を設置。ポーランドなどから主要果樹の改良型苗木や矮化台木を購入し、果樹苗木販売のビジネスがキルギスでも可能かどうか探ってきた。
プロジェクトでは、各営林署の苗畑担当者を対象に、隣国のカザフスタンやポーランドなどでの接ぎ木や台木生産の研修も実施。さらにキルギス国内の専門家と定期的な巡回指導を行ったり、スマートフォンのソーシャルメディアを通じて苗畑担当者の疑問や質問に随時対応するなどしてきた。
3州は気候や土壌、水源の確保などの条件がそれぞれ異なるほか、春先の遅雪やひょうなどの被害に遭ったり、組織改革などのあおりで営林署の担当者の配属が一時期中断されたりと、一筋縄では進まなかった日々でもあった
今年9月中旬には、国際協力機構(JICA)短期専門家で、NHK「趣味の園芸」の講師でもある元長野県果樹試験場長の小池洋男先生と現地視察する機会があった。苗木や台木の生育状態を観察しながら、苗畑担当者の質問にも対応してもらい、今年の冬から来年にかけての必要事項などについても丁寧に説明してもらった。
イシククリ州のジェティオグス営林署にある試験圃場を訪問した際には、3年前にポーランドから輸入したリンゴの苗木が、病虫害などに悩まされながらも比較的順調に育っており、晩生種のムツも大きな実をつけているのを見つけて素直にうれしくなった。
17年9月にはキルギスのカウンターパート4人が岩手県や青森県で、リンゴなどの保冷倉庫や種苗会社を訪問し、生産や加工の現場を体験して貴重な意見交換をさせてもらっている。彼らは「日本の果樹栽培技術や販売、マーケティングをキルギスの現状と比較するとまだまだ課題が多い」と日本から戻って来て語ってくれたが、その知見はゆっくりと関係者の間で広がってきている。
実際に果樹の苗木販売を新しいビジネスとして確立できるかどうかは各営林署の技量にもよる。苗木を売りだすまでには少なくともあと2年間は必要で、このプロジェクトの終了後、それぞれの営林署が自主的に運営資金を確保し、維持管理していくことが求められる。
七つの営林署のうち、どの営林署が苗畑ビジネスを確立するのか、今から気になるところである。
