「生活を懸け走る舞台」岩手日報No.665

2022年12月4日

 スポーツの秋、というかジャカランダの花が咲き誇る赤道直下のナイロビ市内は春めいてきて、気持ちの良い季節。ナイロビ市内では、 フルマラソンの大会が10月30日日曜日の朝に開催された。フルだけなく、ハーフと10キロそして家族向けの5キロの4つのコースが用意されており、国際協力機構(JICA)ケニア事務所からも男女合わせて26名が登録し、そのうち5名がハーフマラソンに参加した。事務所のナショナルスタッフであるギタウさんが事務局との連絡や登録、集合場所や当日の注意などをまめに行ってくれたこともあり、安心して参加できたのが嬉しい。当日は快晴でカラッとした空気が心地よく、出発前にはズンバなるダンスステージが設置されていて、賑やかな音楽に合わせて踊りつつ準備運動をするというなんともケニアらしい楽しい催し物もあり、気分が盛り上がったものである。参加者は推定でx万人ということで、公共の駐車場も満員、我々はウーバーというタクシーで出かけたのだが、行きも帰りも混んでいてかなり待たされた。

ナイロビ市内で開催されたマラソン大会
ナイロビ市内で開催されたマラソン大会

 この11月はサッカーのワールドカップがカタールで開催され、日本も参加することから盛り上がりつつあるが、ケニアは残念ながら予選を勝ちぬけなかったので、サッカーに対する関心が低いような気がする。一方で、マラソンは男女とも世界有数のレベルで、ケニア西部の高原地帯を中心に世界のトップランナーを強化・育成するキャンプが増えており、日本の大迫選手も練習していることで知られている。

 また、男子の世界記録保持者であるエリウド・キプチョゲ選手(37歳)は、オリンピック2連覇をしており、今年9月のベルリンマラソンで自身の持つフルマラソン世界記録を30秒更新する2時間1分9秒で優勝したことから、 公認レースでの2時間切りが期待されている。貧しい環境で育つケニアの若者たちにとって、キプチョゲ選手は憧れの存在であり、ケニア人にとってマラソンを走ることは仕事だという位置付けが強い。そんなハングリーな選手たちに、他の国のマラソン選手が勝つことはなかなか難しいのではないか?とすら思える。国内外で開催されるマラソンは、ケニアのマラソン選手にとって大会での賞金を目指す生活をかけた大事な舞台とも言える。今回のナイロビマラソンでは、フルマラソンの選手がゴールの会場に走りこんでくるところを見物していたが、すらっとして8頭身というか、足が本当に長い。カモシカのような走りとはこんな選手たちのことを言うのだろうなあ、と羨ましく眺めた後で、自分たちも5キロのコースに向かったのであった。

 大会のスポンサーは環境配慮から終了地点に無料の苗木配布コーナーを設置しており走り終わったランナーたちが苗木を持ち帰っているのが印象的だった。

「生活を懸け走る舞台」岩手日報No.665