「ナイロビ市民憩いの場所・カルラの森」岩手日報No.644

2022年6月5日

 今年のケニアは8月9日に5年ぶりの大統領選挙を控える。ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、石油や食料など生活必需品の価格が上昇しており、ナイロビ市民の不安や不満が募っている。そんな時に息抜きが出来る場所が身近にあると嬉しい。

 ケニアの人口のおよそ1割が住むナイロビ。高層ビルや高速道路が建設されて近代都市の様相を整えつつあるが、少し郊外に出ると昔ながらの農牧地や紅茶畑が広がる。嬉しいことに緑豊かな公園が市内に数箇所あり、週末には市民の貴重な憩いの場となっている。

ナイロビ市民の憩いの場となっている「カルラの森」
ナイロビ市民の憩いの場となっている「カルラの森」

 その一つが「カルラの森」。現在はケニア森林公社(KFS)の管理下にあり、制服を着たレンジャーが入園金(現金の支払いは受け付けず、デジタル払い)を徴収したり、園内の監視をしている。舗装道路を挟んで東西計1041ヘクタール(岩手大学上田キャンパスの2倍以上)。地図を見なくても安心して歩けるよう5キロコース、10キロコースなどが色分けされて設定されている。

 20年以上前には粗大ゴミが不法投棄される無法地帯で、一般の人は近づかないような危険地域だったそうだ。殺人された死体が時々埋められたいたとの噂もある。そんな場所を市民のレクレーションの場所にすべく奮闘したのが、KFSと、ノーベル賞受賞者の環境問題活動家故ワンガリ・マータイさんだ。荒れ果てていた土地に市民とともに植林を進め、歩道や駐車場などを整備。今では週末になると近所の住民や国連関係者などが訪れる憩いの場となった。

 森の中には小さな滝もあり、記念写真を撮る家族やカップルでも賑わっている。入園料は200シリング(約200円)と少し高めだが、園内を警備するレンジャーや施設の整備等に役立っていると思えば、苦にならない。

 実はこの森を初めて訪問した時、ペットボトルの持ち込みを禁止されたのを知らずに入ろうとした。カバンを開けられビックリした。結局、ペットボトルは入口のところにまとめて預けるよう忠告され、出る時に持ち帰るよう説明を受けた。それ以来マイボトルに飲料水を詰めて散歩に出かけるようにしている。とはいえ、ナイロビ市内に目を転じると道路沿いにはポイ捨てのペットボトルが散乱している。

 昨年は新型コロナウイルス禍で飲食店やレジャー関係の施設が閉鎖されていた時期にここが開かれていて、気分転換にどれだけ助けてもらったことか。これからも定期的に通うようにしたい。

「ナイロビ市民憩いの場所・カルラの森」岩手日報No.625