「ケニアのソーシャルカフェ」岩手日報No.625

2021年12月26日

 ケニアの気候変動対策の一つとして循環型経済による廃棄物対策が挙げられている。日本の自治体でも、4R運動つまり、Refuse(リフューズ:断る)、Reduce(リデュース:減らす)、Reuse(リユース:繰り返し使う)、そしてRecycle(リサイクル:資源として再生利用する)が推進されているが、ケニアは未だ一部でしか実施されていない。

 ポリ袋の使用は制限されているものの、家庭ゴミの分別や新聞紙・ペットボトル等の回収等は組織化されていない。一方で飲食業界ではソーシャルカフェが根付いてきている。その一つが、2年前の2019年1月から営業している「パレット・カフェ」(パレットとは物流に欠かせない荷物を乗せるための台)。

 中庭が広々としたお洒落な空間で、パレットを再利用したテーブルや、ワインの空き瓶を加工した照明、搾りたてのジュースは、ジャムなどの空き瓶に入れて出てくるなど、日本の4Rを思い出させる。そして先日初めて気がついたのだが、ミネラル水のボトルは製造元に特注したお店のラベル入りガラスボトル。渋いのである。

ドラム缶を利用した花壇があるパレット・カフェの中庭

 特筆すべきは、聴覚障害のある若者をウェーターやコックとして10名以上雇って繁盛していること。聴覚障害者を束ねる女性マネージャーと話したところ、ここはチャリティではなくビジネスとしてカフェを展開しているし、コロナ禍で3ヶ月お店を閉めたときは苦しかったけどその後にテイクアウトで再開して、経営もだいぶ安定して来たと言う。

 ソーシャルカフェだからと言う甘えは全く感じられない。従業員もイキイキと働いており、客とのコミュニケーションも身振り手振りでなんとかこなす。ピザの竃の隣には手話についての英語ポスターが貼ってあったり、手話を学ぶコースの紹介が掲示板にあったりするのもいい感じである。

 お値段は庶民向けと言うよりは外国人向けで少し高めに設定されているが、それでも週末に行くと、子供連れやケニア人カップル、欧米人などで混雑している。聴覚障害者が働く職場としての宣伝は特に強調せずに、さりげなく雇用創出に貢献しているカフェ。これからも応援していきたい。

「ケニアのソーシャルカフェ」岩手日報No.625