「脱プラスチックの先進国・ケニア」岩手日報No.615

2021年10月17日

 昨年7月からレジ袋が日本でも有料化され、これを機にエコバックを利用する人も増えている。世界でもプラスチックゴミは大きな社会問題となっており、ゴミ問題はアフリカでも深刻な問題の一つである。

 ところがケニアはある意味で日本よりも先進国かもしれない。ケニアでは2017年8月からポリ袋の製造・販売・輸入・使用までが禁止され、2019年6月からケニアへ飛行機等で入国する際にポリ袋の持ち込みが禁止された。昨年12月に日本からケニアに赴任するに当たっても、日本の旅行代理店から「違反者には非常に厳しい罰金が課せられる場合がある」と説明を受けて、ポリ袋抜きでスーツケースをまとめた覚えがある。

店頭に並ぶさまざまなデザインのマイバッグ
店頭に並ぶさまざまなデザインのマイバッグ

 ケニアではもしショッピングに行ってマイバッグを持っていなかったら、有料の袋を買うことになる。価格は店にもよるし、袋の素材にもよるが、いずれにしてもポリ袋ではない。ケニアでポリ袋が禁止される以前は、町中で大量のポリ袋が流通していたという。大半が投げ捨てられており、河川をせき止めたり、餌と間違えて飲み込む鳥や魚、家畜の命を奪い、事態は深刻だったとのこと。確かに今のナイロビ市内は側溝も比較的綺麗で淀んだ汚水も少なく、意外と清潔な感じがする。

 脱プラスチックの動きはポリ袋だけでない。ナイロビ北部にあるカルラ森林公園は全体でおよそ1000ヘクタールの広さを誇る有料施設だ。「もったいない」という言葉を世界中に広めたノーベル平和賞受賞者で元ケニア環境副大臣だったワンガリ・マータイさんが保全整備に尽力したことでも知られている市民の憩いの場でもある。

 ここで散歩やジョギングを楽しむ市民の多くは、マイボトルを持参する。知らずにペットボトルを持ち込もうとすると、入り口でカバンを検査され、ゲートの脇の机に預けて、公園から出る時に持ち帰るよう、森林官から指示を受ける。

 一度うっかりマイボトルを忘れ、喉の渇きを感じながら散歩する羽目になったことがあり、それ以来、忘れずにマイボトルに飲料水を詰めてこの公園を訪問するようにしている。公園内は大都会に住むことを忘れさせてくれるような快適な環境だ。それでも公園に向かう道路沿いにはポイ捨てのペットボトルが未だ未だ散乱しており、ナイロビ市民への環境啓蒙運動などの対策が今後も必要なのかもしれない。