「リサイクルの新しい流れ」岩手日報No.736号

 プラスチック汚染を終結させるはずの国際協定は行き詰まり、国際協力の難しさが浮き彫りとなっている。国連で進められてきた世界初の法的拘束力を持つプラスチック条約の交渉は、ジュネーブでの最終会合(2025年8月)が決裂した。米国が自主的措置以外を拒み、産油国も生産規制に反対したため、170か国以上が合意を模索したにもかかわらず妥協点は見いだせなかった。地球規模の課題解決に向け、各国が歩み寄る道を模索することがこれまで以上に求められている。

 一方、地域レベルでは具体的な取り組みが各国で進んでいる。ゴミ問題は日常生活をする上で避けて通れない。オランダでは、昔から循環型経済を推奨してきており、ペットボトルや缶にデポジット(預り金)を上乗せし、返却時に払い戻す「スタティーゲルト制度」が拡大している。対象は当初のビール瓶やコーラなどの大容量ボトルから小型ペットボトル、さらにアルミ缶へと広がり、回収率は2024年にボトル77%、缶84%と高水準に達した。今年5月にはロッテルダムやアムステルダムといった大都市には専用リターン店舗が開設された。大量の容器を一括で返却できる仕組みも整ってきている。制度利用者は国民の9割を超え、累計で小型ボトル54億本(一人当たりおよそ300本)、缶でも36億本が回収されている。

 もっとも課題も残る。オランダ政府が掲げる回収率90%にはまだ届かず、監督機関は改善を要求している。預り金額15セント(約20円)ではインセンティブが弱いとの声もあり、25セントへの引き上げが検討中だ。公共ゴミ箱が「拾得者」に漁られて荒らされる問題や、乳飲料容器など対象外パッケージの残存も指摘される。それでも制度は拡張を続け、2027年までに回収拠点を5,400か所以上に増やす計画がオランダでは進んでいる。

 ゴミ問題の世界的な交渉が難航する一方で、オランダの事例は「制度設計と市民参加が噛み合えば成果は出せる」ことを示している。日本も2019年に大阪で開催されたG20首脳会合で「海洋プラごみゼロ」を掲げた国として、国際協調と国内実践の両面でより大きな役割を果たすことが期待されており、身近なリサイクルから、新しい流れをつくることが求められている。

「リサイクルの新しい流れ」岩手日報No.736号
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