「チリ・コンパルテ」岩手日報No.73
2010年3月20日
2月28日に南米チリで発生した大地震による津波は、日本列島各地を襲った。ちょうど50年前の1960年5月24日、マグニチュード9.5という大規模地震が同じくチリで発生し、岩手や宮城両県で大きな被害もたらしたチリ地震津波を思い出した方も少なくなかっただろう。
今年1月のハイチ地震より死傷者は少ないものの、チリの被害は、地場産業である養殖や林業、ワイン製造など広範でかなり大きかった。公平で公正な貿易取引を目指すフェアトレード団体でも同じで、工場が倒壊したり出荷予定の製品が壊れて売り物にならないなど深刻な状況となっている。
チリのフェアトレード団体の一つ、「コンパルテ」の被害をお知らせする。同団体のヘラルド代表とは2007年5月、ベルギーで開催された国際フェアトレード連盟(IFAT、現在WFTO)の国際会議で出会った。
チリのフェアトレードワインなどをごちそうになりながら、同国の生産者の話を聞かせてもらったのが縁で、その後も連絡を取り合っていた。先日、ヘラルド代表から来た近況報告は、今回の地震被害の大きさについて触れており、何か支援ができないかと思ってこの原稿を書いている。
コンパルテの主な取引先はチリ中部や南部の約130の小規模生産者団体だ。うち14団体はワインやオリーブ油の生産者で、ほかは陶芸や民族衣装、アクセサリーを製造する家族経営の手工芸業者だ。
コンパルテが、ウェブ上での製品販売や欧米諸国への輸出などに取り組んでいることから、多くの生産者は定期的な収入を得ている。しかし、取引先の約3分の1はチリの最低賃金(月額160ドル=約1万4千円)を得ることができずにいる。
それに今回の地震被害が追い打ちを掛けた。3月11日現在の調べで、99団体のうち27団体で家屋が、6団体がワークショップを全壊したという。最も被害が大きかった地区の一つが首都サンチアゴから南西約60キロの盆地に位置するポマイレ。陶芸で有名な街で、倉庫に保管していた製品が壊れ、地震で窯も崩壊し、仕事を再開できずにいる。
ヘラルド氏は▽何より必要なのは募金ではなく、製品の生産を再開して従来通りの注文を受け商売をすること▽甚大な被害に遭った生産者団体のニーズを早急に把握して必要となる緊急投資の計画をまとめる―などを提案している。
今回の地震津波の経験から、距離的に遠いチリも意外と身近な国と思っている岩手県民も多いと思う。地震で被害を受けたフェアトレード団体を何らかの形で支援してくれる方が出てきてくれることを期待している。
コンパルテのウェブサイト(英語及びスペイン語)はwww.comparte.cl
