スタンレーホテル

 ナイロビの旧市街にある由緒あるホテルの一つがアフリカ探検家に因んだスタンレーホテルです。ケニアに赴任して以来、一度は訪れてみたいと思っていたのですが、なかなか機会が無かったので、昨年のクリスマス休暇に2泊することにしてみました。歴史を感じさせる内装と、行き届いたサービスはさすがです。ただ、一つだけ残念だったのは、クリスマスということで真夜中から明け方まで、ホテルの近くで大音響のパーティが繰り広げられ、初日の夜に耐えきれずに比較的静かな部屋に変えてもらわざるを得なかったことです。

 とはいえ、文豪のヘミングウェイも楽しんだと言われるバーや、インターネットなどが無い時代に、旅人たちが伝言板として使っていたという前庭にあるアカシアの木(すでに3代目)など、ケニアが英国植民地だった1902年にオープンして以来の1世紀以上の期間に起こったいろんな出来事がホテル中に散りばめられた写真や地図、ポスターからも伺えるのです。白黒の写真の中には、20世紀初頭に開通したばかりのモンバサからナイロビまでの鉄道や当時運転されていた蒸気機関車、そして英国王室の公式訪問などあり、ロビーに説明付きで飾ってあります。それを一つずつ見るだけでも結構楽しく、植民地支配されていたケニアが断片的ではありますが、伝わってきます。また、2階にあるバーで提供されるカクテルも良心的な値段で、革のゆったりしたソファに座って見ると、昔の社交場の雰囲気が感じられ、葉巻を吸ったりウィスキーを傾けたりしながらいろんな旅人やビジネス関係者が集っていたんだろうなあ、などと思いに耽ったりしてマリエッタと雑談をして過ごしたりしました。

 ホテルの周辺は昔からのビジネス街で石造りの重厚な建物(銀行や証券会社)が並んでおり、偶然立ち寄ったArtCafeは廃れていた証券取引所を改造したアール・デコ風の鉄骨とケニアの画家が描いた絵画に囲まれた何ともおしゃれなカフェです。ガイドブックには載っていなかったような気がするので、ちょっとした発見でもありました。コロナ禍でオミクロン変異種が猛威を振るっている昨今のケニア国内、本来であれば観光シーズンの掻き入れどきでもっと混んでいたはずのスタンレーホテルのはずです。今回はたまたま静かでのんびりと過ごすことが出来たのでラッキーでしたが、だれか知り合いが来たら是非連れて来たいと思っています。ナイロビにお越しの際に声をかけてもらえれば案内したいと思います。