JICA筑波のサイトで本の紹介していただきました

茨城からアフリカへ――40年の森づくりをつないだ人と技術

 JICA筑波センターのある茨城県とアフリカの森づくり。一見すると遠く離れた二つの地域ですが、実は深いつながりがあります。JICAは1985年、東アフリカのケニアで本格的な森林・林業分野の技術協力を開始しました。その中心となったのが、国が主体となって木を植えるだけでなく、地域住民自身が森林を育て、守り、暮らしに活用していく「社会林業」という考え方です。この壮大な構想を掲げ、初代チーフアドバイザーとして現地で奮闘したのが渡辺桂氏でした。

 渡辺氏は1933年、茨城県鹿島郡鉾田町(現在の鉾田市)に生まれ、旧制水戸高等学校を経て東京大学農学部林学科を卒業しました。林野庁、国連食糧農業機関(FAO)、JICAなどで森林・林業協力に携わり、ケニアでは半乾燥地という厳しい自然条件の中で、「住民の暮らしを支えながら、どう森林を守るか」という課題に挑みました。

 もう一つの茨城との縁が、日立市にある森林総合研究所林木育種センター[1]です。ケニアでは社会林業と並行して、乾燥に強く、農家にとって木材としての価値も高い郷土樹種「メリア」などの研究が長年続けられてきました。日本で培われた林木育種の知見を生かし、ケニア森林研究所(KEFRI)の研究者たちと共に、優良な木を選び、種を採り、苗木を育てる技術を築いてきました。茨城で蓄積された森林研究の知見が、遠くケニアの乾燥した大地で森を育てる力となったのです。こうした協力は、やがて「日本からケニアへの技術移転」という枠を越えていきました。育ったケニア人研究者たちは、今度は自らの経験を他のアフリカ諸国へ伝える側となり、森林保全、気候変動対策、地域協力へと活動の輪を広げています。 

 2026年に本庄さんと共著で刊行した『アフリカを緑に―ケニアと日本の森づくり40年の軌跡[2]』(JICA緒方研究所)は、こうした長年の挑戦を、研究者や専門家、そして地域住民らとのつながりを軸に描いた一冊です。その物語をたどっていくと、茨城からケニアへ、そしてアフリカへとつながってきた、知られざる「緑の国際協力」の歴史が見えてきます。JICA筑波センターにも置いてありますのでぜひ手に取ってみてください。 (清水正・JICAルワンダ事務所)

[1] https://www.ffpri.go.jp/ftbc/
[2] https://www.jica.go.jp/jica_ri/publication/projecthistory/1581987_24094.html